2018年01月16日

田丸雅智著「ショートショート・マルシェ」(2015年)

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ショートショートって大好き。
手軽に読めるし、短いすぐにオチへとたどりつける。中学生のころは星新一さんのショートショートをよく読んでいた。その星さんの孫弟子に当たるのが、若い田丸雅智さんという作家だ。彼は東大工学部、同大工学系研究科で学んだエリート。文章の構成力に理系の才が見られて面白い。

「ショートショート・マルシェ」は「食」にまつわる話ばかりを集めている。私のお気に入りは「差し歯」。歯の治療費を節約したいある男は、歯科医からコスパ抜群の差し歯を勧められる。それは「トウモロコシ歯」。自分で簡単に取り換えられるので便利だが、ただ一つだけ熱いものを噛んではいけないという欠点が…。それはなぜか、というオチがある。

すいすい読めるだけでなく、アイデアさえあれば自分で書けそうな気になる。それがショートショートの魅力。挑戦してみようかな―。

↓これでショートショートの書き方を学びたい!



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2018年01月15日

横溝正史著「獄門島」(1947年)

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長谷川博己さんが名探偵金田一耕助を演じた「獄門島(横溝正史)」新しいドラマ版を観ると、市川崑監督の映画版(1977年)に出演していた役者さんたち(大原麗子さんや太地喜和子さん司葉子さん…)らがいかに魅力的だったかが分かり、それに引きずられて久しぶりに原作を読むとなぜか面白くなかった。

映画版で三姉妹が俳句の見立てによって殺される映像が頭に焼き付いていて、原作の方が追い付いていってないような逆転現象みたいな感覚に陥るからだろうか。雪枝が鐘の下に身体を押し込まれて、挙句の果てに首が飛ぶ映画版の有名なシーン。小説ではそういう凄惨な首ピョーンがなくて、何だか拍子抜けしたりして。

それでも、新しい発見はある。「戦争」を中心とした視点で小説を読むと、新鮮な気がしてきた。獄門島は、金田一耕助が復員してまもなくの事件。南方からの復員船の中で、病に侵された友人の鬼頭千万太から「自分が死んだら妹たちを守ってほしい」と頼まれる。千万太の死によって金田一は獄門島に向かい、戦争に跡取りを奪われて没落していく網元を目の当たりにする。

この図式って、「犬神家の一族」とも似ている。日本軍とからんで巨大化した製薬工場を営む犬神家も戦後、跡取り候補の一人である佐清の復員から始まり、跡目争いから事件へと発展していく。奇抜な殺人事件に目を奪われるが、戦争によって人生を変えられ、翻弄される人々(犯人たち…)の苦悩が多く描かれる。

「ああ、あれ、…機雷を爆破しているんですね」。
「遠くのやつは機雷、近くのやつは、ほら、無効に見えるあの島の、軍事施設をこわしているのじゃ。まったくつわものどもが夢の跡じゃな」(獄門島)
金田一と了然和尚との何気ない会話に、作家の胸中にある(戦争に対する)むなしさを感じて、ハッとさせられる。

石坂浩二さんの金田一シリーズ「獄門島
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2018年01月13日

大岡昇平著「野火」(1951年)

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戦後70年だった2015年夏、戦争小説の代表作「野火」の映画(塚本晋也監督)が公開され、映画館で観た。凄まじい作品だった。色彩も鮮やかな美しいフィリピンの自然の下で、繰り広げられる愚かな人間同士の殺し合い。飢えのために友軍の屍肉さえ口にする人間の狂気。戦争のおぞましさをギリギリまでリアリティーに表現している。

この作品をきっかけに、1959年に市川昆監督によって映画化された作品もDVDで観てみる。モノクロ映像の市川バージョンは極限状態の兵士を描きながらも、どこか人間の滑稽さが漂う。違いが象徴的なのは、ふたつの作品のラストだ。

市川監督の作品では、主人公の日本兵が人肉を食らう仲間の兵士を撃ち殺し、野火の煙によろよろと駆け寄っていく。塚本監督の作品は、主人公(…どうも精神を病んでいるらしい)の復員した後まで描き、次なる戦火を予感させて終わる。危機感というか、時代への「切羽詰まった感」があるのは、塚本監督作品だ。

原作となった大岡昇平さんの「野火」。太平洋戦争の末期、フィリピン・レイテ島で敗走する日本兵の田村は病のために、部隊からも野戦病院からも追い出され、ジャングルの中を迷走する。

小説では、逃げのびていく田村の心情が丹念につづられ、宗教的な要素も加わっていく。飢えによって人肉を食べたいという強い欲求と、それを嫌悪し抑止する良心がぶつかり合う。米兵との戦闘シーンはほとんどなく、田村ら日本兵が飢えや病によって自滅していくさまが戦争の本質と主張している。

↓塚本版「野火」はトラウマになるほど。
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2018年01月12日

深沢七郎著「楢山節考」(1957年)

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最近読んだ本の中で、最も衝撃を受けたかもしれない。
人間の根源を目の前にえぐり出され、広げて見せられた感覚がある。
確かにそうかもしれない。

昔、昔。食べ物がそう豊富にない貧しい村落では、口減らしのために長生きのお年寄りは山に捨てられていたのかもしれない。それが習わしだから、誰も不思議とは思わないし、皆は順番にそれに従うまでだ。

人が人として子孫を残していくためには当たり前のこと、そう考えると残酷だとか非人道的だ、とかそんなことを感じる余地はないのかもしれない。

深沢七郎の「楢山節考」は、姥捨て伝説がモチーフとなっている。昔ばなしの「姥捨て山」は、孝行息子が老母を救う話だが、「楢山節考」の孝行息子は、掟に逆らおうとはしない。

老女おりんは、70歳になったら楢山へ行く村の掟に従って山行きの準備をする。家族内の問題を次々と片付け、心置きなく山へ向かおうとしている。息子の辰平はそんな母の姿を見て密かに涙をこぼすが、やがておりんを背負い、山へ登っていく。

坂本スミ子さんと緒形拳さんの主演によって映画化された「楢山節考」(1983年、今村昌平監督)には原作にはないシーンを加えて、部落の過酷な貧しさを強調している。左とん平さん演じる辰平の弟利助は「奴(やっこ)」と呼ばれる家の雑用係。食糧が乏しい村で次男は、嫁をもらって子を持つことも許されない。性欲を抑えきれない姿が滑稽に描かれる。

他人の食糧を盗み続けてきた家族を、村人総出で生き埋めにして「始末」するシーンでは、おりんの孫の嫁で食欲が旺盛な松やんも実家の家族とともに殺される。口減らしのため、おりんたちは黙って嫁を差し出す。

私たちの祖先は生き延びるために、何でもしてきたのだ。
そういうことなのだ。
↓映画版「楢山節考」
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2018年01月11日

恩田陸著「夜のピクニック」(2004年)

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恩田陸さんが直木賞を受賞した昨年、「今ごろ…直木賞?!」と異常にびっくりした。キャリアや作品の多彩さで、誰もがそう思うに違いない。
恩田さんの作品の中でも大好きなのが「夜のピクニック」。恩田さんの母校「県立水戸第一高校」の伝統行事で、夜に全校生徒が80`近く歩き続ける「鍛錬歩行祭」が、物語の舞台だ。

ひたすら生徒が歩き続けるだけ。それなのに、「みんなで、夜歩く。だだそれだけのことがどうしてこんなに特別なんだろう」と生徒たちに思わせる不思議な歩行祭。「闇の中」という非現実的な空気の中で、生徒たちは昼間には話せない悩みや秘密を打ち明け、夢や恋を語り合う。

主人公の貴子は、高校生活最後のイベントとなる歩行祭で「ある賭け」をする。誰よりも強く意識しながら、避けてきた同級生の融にアプローチすること…。

歩きながら、貴子や融をはじめとする登場人物の内面が確実に変わっていく。そして、貴子の賭けには、米国の大学に進学した友人である杏奈の「おまじない」もからむ。貴子と融の関係が恋愛でないところが心憎いし、爽やかだ。

水戸で2016年夏、この小説を原作とした音楽劇「夜のピクニック」を観劇した。「歩くだけ」の物語がどういう演劇になるのかとても不思議だった。観終わって、見事だと思った。

米国にいる杏奈が舞台ではすでに亡くなっている設定で、狂言回し的な役割を果たし、歩く貴子や友人たちの物語をサポートしていてとてもわかりやすかった。貴子の母を演じた剣幸さん、杏奈役の吉川友さんら一線で活躍する俳優さんに負けず劣らず、地元出身の若い演劇人も生き生きと演じていて、気持ちの良い青春劇。
再演を願っている。

↓「直木賞」と「本屋大賞」のダブル受賞
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2017年12月27日

ドリアン助川著「あん」(2013年)

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ハンセン病の父と幼い息子がお遍路姿で放浪する映画「砂の器」(1974年)をふと、思い出した。映画が公開された時代ならまだしも、ハンセン病患者に対する偏見と差別は根強く続いている。「らい予防法」が廃止されて20年たった今でも、元患者に対する風当たりは強く、彼らの苦悩は命ある限りなくならない。

ドリアン助川さんの物語はそこにだけに強く焦点を絞っていないところが、いい。服役経験があるどら焼き屋の主人・千太郎と元患者の徳江との心の交流とふたりを結び付けた「あん」に光を当て、優しい読み心地に仕立てている。

桜並木に近い千太郎の店「どら春」に、働きたいという76歳の徳江が現れる。高齢で指が曲がった彼女を敬遠していた千太郎は、徳江が炊いた美味しいあんを食べて雇う気になる。徳江が丁寧に炊くあんのおかげで、千太郎の店は繁盛する。

それもつかの間、千太郎の店から客足が途絶える。徳江が過去に患っていたハンセン病のためだった…。

徳江が炊くあんづくりの描写が素敵だ。小豆を大切に扱い、あくを抜く作業に手を抜かない。読むだけで、あんの深い味わいを想像してしまう。あんに愛情を注ぐ徳江のいじらしい姿と対照的に、ハンセン病を嫌悪して「どら春」から離れていく客たちの身勝手さが際立つ。

物語の後半は、ハンセン病療養所に暮らす徳江の想いが明かされ、千太郎は徳江のあんを受け継いでいこうとする。徳江は苦しみの中で、「この世に生まれてきた意味」を考えていた。
「私たちはこの世を観るために、聞くために生まれてきた。この世はただそれだけを望んでいた」。「私たちが感じた世界は、そこに生まれる―だから、生きる価値はあるのだ」と。

千太郎がつくろうとしていた「塩どら焼き」は完成したのか、自分の店を持てたのか。それは読者の想像に委ねられ、そこがこの物語の良さのような気がする。

読後、小豆を買ってきてあんを炊いてみた。あくがほんの少し残り、渋味が感じられる。人生と同じだなと苦笑する。
河瀬直美監督で2015年に映画化
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2017年12月26日

久賀谷亮著「世界のエリートがやっている最高の休息法」(2016年)



「疲れが取れない」という言葉を、職場でもよく聞く。それは脳の疲労が原因の一つらしい。ひどくなると仕事のパフォーマンスが落ち、集中力も衰える。それだけにとどまらず、心の病気になる人もいる。

米国で精神医学の臨床医として活躍している久賀谷亮さんは、「世界のエリートがやっている最高の休息法」の中でマインドフルネス(瞑想など)こそ脳の疲労を取り去り、脳を休息させる早道だと説く。それを、脳科学を学ぶナツという女子学生を主人公にした物語の中で解説する。

そもそも、脳が疲労するのはどうしてなのか。根本的な原因は、意識が常に過去や未来ばかりに向かい、「今、ここ」にない状態だからだという。瞑想して雑念を取り払い、呼吸に注意を向けて「今、ここ」を意識すると集中力のアップやストレスの低減、免疫力の向上が期待できる。

「今、ここ」がキーワード、というのが面白い。
もう戻らないことをくよくよと悩み(過去)、まだ来てもいない将来のことを不安がる(未来)。これこそが、無駄なのだ。人は「今、ここ」の瞬間を必死に走り抜けるしかない。脳は正直なのだろうと思う。無駄なことをすると、疲れてダメージを受けるのだ。その事実が面白かったりして。

瞑想を推奨する他の本には、瞑想中にマンダラを心の中でひたすら唱えさせたりする。それも、「今、ここ」に集中させる方法の一つだろう。

5分程度のタイマーをかけて、静かに座ってみる。慣れてくると、あっという間に感じてくる。ちなみに、私のマンダラは「延命十句観音経」。スッキリとするのは気のせいか…。

↓CDブックも。



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2017年06月26日

星野源著「そして生活は続く」(2009年)

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ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」で人気に火がついた俳優&ミュージシャンの星野源さん。私には、NHKのコント番組「LIFE」のうそ太郎(!)を演じる星野源さんの方がなぜか好きだ。

その星野さんの初エッセイ「そして生活は続く」を読むと、「非イケメン」でも人気が出る理由が分かる気がする。

とにかく不器用な人らしい。本人いわく「普通の生活が下手」。携帯の請求書を払いにコンビニに行くのは、いつも後回し。洗面所は常にビシャビシャ。自宅ではよく踊っているらしいし、風呂掃除をする時は喪服のジャケットを着るらしい。そして、よく腹痛に悩まされるらしい。だから、漏らすこともある…らしい。

勉強もスポーツも万能なソツのないイケメンの男子もいいけど、こういう「困ったチャン」ほど他人が放っておけないんじゃないかと思う。

源さんのお母さん「ようこちゃん」(小さい頃から、こう呼んでいるらしい)の影響は大きそうだ。外で「さおや〜さおだけ〜」の声がすると、ようこちゃんは「私はさおやさおだけ星の王女だから、星に帰らなくちゃ」と買い物に行ってしまったり、排水中の風呂に浸かって「吸い込まれる〜〜助けて!」と源少年に必死の形相で助けを求めてみたり。

こんなに想像力豊かでユニークなお母さんに育てられたら、外でイジメられていようが仲間外れにされようが、関係なくなっちゃうし、元気になれそうだ。

なかなかのバランス感覚の持ち主だとも思う。

「世界はひとつ」というスローガンを見ても、いまいちピンとこなかった自分。連帯責任という言葉に激しく嫌悪を感じる自分。本当に優秀な集団というのは、おそらく「ひとつでいることを持続させることができる人たちよりも、『全員が違うことを考えながら持続できる』人たちのことを言うんじゃないだろうか」。

…とは、私の琴線に触れた源さまのお言葉だ。

↓源さまのヒット曲
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2017年06月02日

石田衣良著「娼年」(2001年)

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娼年 [ 石田衣良 ]
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石田衣良さんの「娼年」が昨年、舞台化された。松坂桃李さんや高岡早紀さんらが主演し、「ポツドール」主宰の三浦大輔さんが演出だけに、観たくてたまらないけど実現できなかったので、せめて原作をじっくり読もうと手に取った。

大学生リョウは、女性向けの高級コールボーイクラブを経営する御堂静香と出会い、「女性に肉体を売る」娼夫の仕事を始める。リョウはさまざまな女性を相手にしつつ、誰にでもその人なりの欲望や物語があることを知る。夫の目の前で若い男に犯されたい妻、街でひろってきた中年男性と3人プレイでなければ燃えない若い女性、おしっこを見てもらいたい中年の女性…。欲望が奇妙であっても、リョウは優しく淡々と応える。

表面を飾ろうとする気持ちだけで、ぼくにはどの女性も魅力的に見えた。悪趣味でちぐはぐな衣装だと人をあざけることは、ほんとうは誰にもできないはずなのだ。この世界では誰もが、手近なボロ隠しをまとっている。黄金の心をもつ正しい人間だけ裸で外を歩けばいい。ぼくは裸は嫌だからボロを着る」。

人の弱さや正しくないこと…を受け止めるリョウの優しさや公平な目線。それとは対角線上にいる同級生のメグミはリョウに好意を寄せながらも、正しさを求めてクラブや静香を追い込んでいく。

リョウの目から見た女性の描写がこれまた、優しい。若くない肌の質感、体液。…これって想像だけで書けるもの?と思いつつ…そこには、全てに優しさ、愛おしさ、許しを感じる老成した20歳のリョウという若者がいる。理想の「娼年」。

↓新聞連載をいつも読んでいました。
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2017年06月01日

酒井順子著「おばさん未満」(2008年)

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おばさん未満 (集英社文庫) [ 酒井順子 ]
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ほぼ同じ年代の同僚男性に「オバハン!」と呼ばれたときは、ムッときた。ハンパなく、ムカついた。オバハンと言われればそうなんだけど、「なんでこんなにムカつくんだろう」と考えると、それは「オバハン=若くなくて魅力ない人」という図式が人々の中に根を下ろしているからなんだと思う。

日本は「未熟」を愛でる、「若くてナンボ」の風潮で満ちている国。「老いることを許さない」国なのです。成熟した女性を称賛する文化はない。だから、私たち日本の女性は「おばさん」になることを嫌がり、美容や健康維持に血道を上げる。けれども、若々しいメークや装いをしたらしたで「イタイ」とか何とか言われる。

どうすればいいんだ!中年女性。

酒井順子さんの「おばさん未満」は、40代の微妙な心理や本音をつづっている。若くはないけど、「おばさん」とは言われたくない年代。気持ちは若いつもりでも、身体の老化は日々感じる。他人のひじやひざのたるみが露わになって、自分を顧みたときにハッとしたり、いつのまにか昔を回顧することが大好きになっていたり…。

およそ10年前に書かれた本なので、今と照らし合わせると微妙にズレがあるような気もする。今はさらに、「老いることが許されない」社会になり、「おばさん」がいなくなってきた。40、50代が見た目30代の若さを維持するのは当たり前。「おばさん」と言わせないオーラを醸し出している中年女性のなんと多いことか。

酒井さんはあとがきで、「おばさんと自覚している人」が減少することは、社会にとって損失と書いている。おばさんとは面倒見がよく、他人に愛情を注げる存在。これに反して、若さや美しさにしがみつき、他者に褒められたい、甘えたい女性が増えると世の中は一体、どうなるのかと。

…ということは、日本は充たされない中年女性ばかりということか。そして、私もそのひとりなのだ。

↓お芝居好きの私は読みたい!
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女を観る歌舞伎 [ 酒井 順子 ]
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